ベーチェット病とは・・・?
膠原病ハンドブック 帝京大学医学部第二内科診療教授 橋本喬史著より
始めに ベーチェット病は
全身性に症状が発現し、発熱や関節症状を伴いやすいことから、膠原病近縁疾患に位置づけられており、一部での患者では膠原病との鑑別が必要となるが、症状に特長があるので診断が困難になることは少ない。わが国に患者は多く、現在世界で最も多い15000人から18000人の患者の存在が推定されています。
1・症状と検査所見
症状は発作性に出現し、1~2週の経過で消退するものが多い。症状増悪因子となるのは、過労、寒冷、気圧配置の変化、女性の性周期、感染などてある。季節の変わり目、特に急に寒くなる晩秋から初冬にかけて症状が好発する。
多彩の症状のうち、出現頻度が高いのは、
口腔粘膜のアフタ性潰瘍、皮膚症状、眼症状、外陰部潰瘍、関節炎であり、これらの症状は発病早期から認められることが多い。特に口腔粘膜のアフタ性潰瘍はほぼ必発し、初発症状となることが多い。中枢神経症状、血管症状、腸管潰瘍はこれらの症状に遅れて発現することが多く、頻度も低いが、重篤化しやすいので、早期に診断して治療を開始する必要がある。
一部の患者では、副睾丸炎、泌尿器症状、肺症状、心症状を認めることがある。症状の活動期にはしばしば発熱や全身倦怠感、寝汗を伴う。
検査所見としては、症状の活動期に血清CRP陽性、血沈亢進、末梢血白血球増加がみられる。
診断の参考となる検査所見としては、皮膚の針反応陽性、HLAーB51陽性、血清免疫グロブリンD増加がある。皮膚の針反応陽性はベーチェット病に特異性が高い反応であり、滅菌注射針を皮膚に刺入して24~48時間後に、その部位の発赤と時に中心部に小膿疱の形成をみるものである。
2. 診断
ベーチェット病では単独で診断の決め手となる症候はないので、診断は臨床諸症状の組み合わせにより行なわれる。
わが国の厚生省診断基準では、口腔粘膜のアフタ性潰瘍、皮膚症状、眼症状、外陰部潰瘍を主症状とし、ほかの症状は副症状としており、4主症状の揃ったものを完全型ベーチェット病とし、3主症状の出現したものと、定型的な眼症状と他の1主症状の出現したものを不完全型ベーチェット病と診断する。診断基準を満たさないが、症状の一部が出現するものは、疑い病型として経過を観察する必要があある。なお、世界的に統一された診断基準の必要性から、最近口腔粘膜のアフタ性潰瘍の診断的意義を重視した国際診断基準が作られたが、広く使用されるには至っていない。
3. 治療と経過
炎症性疾患であるので、
症状発現時には消炎療法として非ステロイド系抗炎症薬や副腎皮質ステロイド薬の投与を行うが、皮膚粘膜症状や眼症状に対しては副腎皮質ステロイド薬は局所療法の形で投与することが多い。一方、
症状の発現や進展を抑制する薬としては、症状に合わせて適切なものを選んで投与している。
好中球機能を抑制するコルヒチンは眼症状をはじめとする活動性の強い症状に用いられる。新しい免疫抑制薬であるサイクロスポリンは、失明の危険のある眼症状に用いられ、高い有効性が得られているが、腎障害などの副作用に注意して使用する必要がある。経過としては、発病後3~7年以内に症状はピークに達し、その後は徐々に軽快し10年以上経つと口腔粘膜のアフタ性潰瘍と皮膚症状が時々認められる程度に症状が落ち着く患者が多くなる。症状が落ち着くまでの間に、視力障害をはじめとする非可逆性の後遺症が残るのをなるべく少なくするようにすることが大切である。
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各症状について・・・
主症状
●口腔粘膜の再発性アフタ性潰瘍 口唇、頬粘膜、舌、歯肉、口蓋粘膜に円形の境界鮮明な潰瘍ができます。これはほぼ必発します(98%)。また初発症状としても重要です。
●皮膚症状 下腿伸側や前腕に結節性紅斑様皮疹がみられます。また"にきび"に似た座瘡様皮疹が顔、頸、胸部などにできます。皮下に血栓性静脈炎がみられることもあります。皮膚の被刺激性が亢進するので、"かみそりまけ "を起こしやすかったり、注射や採血で針を刺したあと、発赤、腫脹、小膿疱をつくったりします(針反応)。
●外陰部潰瘍男性では陰のう、陰茎、亀頭に、女性では大小陰唇、膣粘膜に有痛性の潰瘍がみられます。
●眼症状 この病気でもっとも重要な症状です。ほとんど両眼が侵されます。前眼部病変として虹彩毛様体炎が起こり、羞明、瞳孔不整がみられます。後眼部病変として網膜絡膜炎を起こし、失明に至ることがあります。
主症状以外に以下の副症状があります。●関節炎
膝、足首、手首、肘、肩などの大関節が侵されます。非対称性で、変形や強直を残さず、手指などの小関節が侵されない点で、慢性関節リウマチとは違います。
●血管病変
この病気で血管病変がみられたとき、血管型ベーチェットといいます。圧倒的に男性が多いといわれています。動脈、静脈ともに侵されますが、静脈系の閉塞がもっとも多く、部位では上大静脈、下大静脈、大腿静脈などに好発します。次いで動脈瘤がよくみられます。
●消化器病変
腸管潰瘍を起こしたとき腸管型ベーチェットといいます。やはり男性に多くみられます。腹痛、下痢、下血などの臨床症状を示します。部位は回盲部が圧倒的に多く、その他、上行結腸、横行結腸にもみられます。潰瘍は深く下掘れ、穿孔して緊急手術を必要とすることもあります。
●神経病変
神経症状が前面に出る病型を神経ベーチェットといいます。難治性で、もっとも予後不良です。これも男性に多いのが特徴です。ベーチェット病発症から神経症状発現まで年限がかかり、平均6.5年といわれています。片麻痺、髄膜刺激症状、小脳症状、錐体路症状など多彩です。精神症状をみることもあります。眼病変を欠くものに多いといわれています。
●副睾丸炎
男性患者の約1割弱にみられます。睾丸部の圧痛と腫脹を伴います。